舞台「千と千尋の神隠し」萌音・千 公演配信 素敵だった。
映像ならではの見せ方で、「こんな細かいところまで作り込んでたんだ!」て発見もあって、何より、萌音ちゃんの満点の笑顔をまた観られたのがうれしい。
2時間半の舞台の中で、最初はリンさんに「ちゃんと釜爺に御礼したの⁉︎」て言われてたような千が、舞台が進む中で成長していく様子は何度見てもすごい。
最初に舞台を観た時は、とにかくカンパニーの素晴らしさと
萌音・千ちゃんの成長ぶりの素晴らしさに目を奪われていたのだけど、
改めて公演を観てこれはカオナシの居場所探しの物語でもあるのかなと思った。
カオナシは相手の欲望を刺激して、欲を肥大化させて飛びついてきた相手を取り込んでいくのだけど、
欲に飛びつく相手を取り込めば取り込むほど、どんどん飢餓状態になって、満たされない感情が肥大化して暴走していく。
肥大化して暴走するカオナシは、取り込んだ人の欲望の現れなのかと思う。
欲自体は悪い物ではないけど、満たされない感情を埋めるための欲望は際限がなくて、エスカレートして苦しくなる。
だけど、千はカオナシに対して助けてもらった御礼はするけど、必要以上は欲しがらない。
何かを欲しいから接するのでなくて、ただ湯屋の一人として接する。
薬湯の札も金も「あったら役に立つかも」とか「もらえるだけもらおう」とか思っても良さそうなのに、「今必要ないから要らない」てキッパリ言う。
暴走したカオナシに対して、千が「あの人 湯屋にいるからいけないの」て言ったセリフ、映画で観た時は意味がわからなかったけど、きっと、湯屋では何かが欲しいから損得勘定でカオナシに接して、欲望を肥大化させて暴走してしまう、だからあそこにいない方が良いって言ったのかもしれない。
一見、非力でちっぽけで不安だらけの存在に見える千が、実は心がしっかりしてる。
「生まれて初めてもらった花束がお別れの花束なんて…」て拗ねてた子がこんなに成長するなんて感慨深い。
一方で「要らない」て言われたカオナシは千が去るのを止められないほど動揺して、それが暴走のきっかけになった。
あれは、存在そのものを「要らない」て言われたように受け取ったのかもしれない。
カオナシが相手の欲望を刺激するのは、自分を見てほしいから。
欲を肥大化させて飛びついてきた相手を取り込むのは、独りが嫌だから。
ただ、自分を見て欲しい、独りになりたくない。そんな小さな子みたいな感情。
でも損得勘定で飛びついてきた相手をいくら取り込んでも、本当の意味では自分を見ていないし、結局心は独りで、満たされない感情がどんどん肥大化する。
暴走するカオナシは、自分の感情をどうしていいかわからなくて火のついたように泣いている子みたい。
そう思うと、沼の駅に向かう千に「こっちへおいで」で言われて、
銭婆の家で「あんたはここに残りな。あたしの手伝いをしておくれ」て言われた時、嬉しかっただろうな。
自分を見て欲しくて、独りは嫌と泣いている・カオナシ
大小の違いはあれど、カオナシは自分の中にもいるのかもしれない。